「生涯」という作品

本稽古が始まって、3週間が経とうとしています。5月に1週間、8月に1週間プレ稽古をしていますので、全部で5週間ですか。毎回毎回、作っては壊しの毎日です。

つかこうへいが登場し、演劇界を変えたのが70〜80年代。一度演劇活動を辞め、また再開してプロデュース公演を次々に行っていたのが90年代。そして僕らが北区つかこうへい劇団を結成し、後進の育成に注力したのが2000年代。僕らがつかさんと一緒にいたのは、この2000年代だけです。

今まで見たことのない、つかこうへい初期の作品。実際、この「生涯」という作品は、たった一度しか上演記録がなく、しかもつかさんの演出は一度もないということもあって、往年のつかファンでもこの作品を見たことのある人は少ないのではないでしょうか?存在すら知らない人も多いでしょう。

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でも、おもしろい。
いや、こんなにおもしろいのは久しぶりだというくらい、おもしろい。

くだらない言葉に大笑いしたかと思うと、強烈な言葉が胸に突き刺さってくる。一筋縄ではいかないセリフの応酬。不条理な展開と、だからこそ描き出される真実…。

ああ、これこそ、つかこうへいの作品だ、と実感しています。

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ザックリ作品を紹介します。
主人公は、還暦を過ぎた舅(智之が!∑(゚Д゚))。誰にも迷惑かけずにポックリ死ぬという《高い志》を持ったお年寄りたちのクラブ、ポックリクラブに所属しています。そして自分たちの死に際を飾る、ポックリソングを自分の息子である夫=正雄(祐也くん)に依頼するのですが、見事に外した曲を作ってしまい、葬式の予行演習で大恥をかいてしまいます。なんとか正雄にいい曲を書いてもらおうとするのですが、正雄は父親の行動をバカにするばかりで、まともに向き合おうとしません。舅は正雄の嫁(高野)と共により良い死に様を目指していくのですが果たして…というお話です。

ポックリクラブの老人たちは、とにかく誰が一番悲しみを体現できるか争っているし、舅とライバルの熊田は、二人してどれだけ老醜のさらけ出せるか競っています。舅と嫁は、皮肉を言い合い、いびり合いながら、あるべき嫁舅関係を《仲良く》追求していきます。夫は夫で、父親をバカにしながらも、自分の息子とはコミュニケーションを取れずにいます。

もう、みんな無茶苦茶です。

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でも、息子により良いポックリソングを書かせようとする様は、大山をより良い犯人に育てようとする「熱海殺人事件」の木村伝兵衛たちの姿に重なるし、ポックリ死ぬことを目指しながら死にきれない舅は、「初級革命講座 飛龍伝」を思い出させます。家庭における居場所と権威を失ったお父さんが自分の生きる意味を追い求めるという点は、「戦争で死ねなかったお父さんのために」や「出発」との共通点を感じます。

1975年という年代を考えると、この作品は、書き始めたばかりのつか作品と、その後に続くたくさんの名作たちとをつなぐ、中継地点のようなものなのでしょう。

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たぶん、今、「生涯」などという作品に目を向けて、上演しようなどというもの好きは僕たちくらいでしょうから、これが最後の機会になるかもしれません。ぜひ、見に来ていただきたいと思います。

……。

なんですが!!
チケットがめっちゃ残っているのです!!!

なんでしょうねえ…前回の「ストリッパー物語」はスパーっと売れてしまったんですが、演目が地味だったんでしょうか? 連休明けでお仕事のご予定が立たないのでしょうか?

まだまだチケットございますので、駆け込みのご予約も、当日券も、バンバンお待ちしております!

見なきゃ損ですよ!