書くべき物語が見えてきたら、一行物語を作ってみましょう。いろんなやり方がありますが、僕はこれを主人公の3ステップで作ります。すなわち「どんな主人公が、どうなって、どうなる」という感じです。
適切な主人公はだれか?
まず最初に、アイデアのかけらから主人公を見つけ出さなくてはなりません。自分が観客に与えたい価値を担うに足る、主人公です。もしかしたら、候補が何人かいるかもしれません。その時に、選ぶ基準がいくつかあります。
- 最も変化しやすい人物
最初はこうだったけど、次にこう思って、だからこうしたんだけど、最後にはこうなった、というような、主人公の変化の数が多い、あるいは振れ幅の大きい主人公は、ダイナミックな物語を生み出してくれます。 - 観客がだれの視点でこの物語を見たら、のめり込みやすいか?
観客はその人物と同化したようになって、物語をいっしょに追体験してくれます。観客と目線を揃えやすいキャラクターは便利です。 - この物語で伝えたい価値観を内包している人物
例えば、あなたがこの物語で伝えたいことが「人間の価値は金銭の有無とは別にある」ということであるとすれば、「金のことしか考えない」人物が主人公であれば、そのメッセージはすんなり観客に伝わるはずです。
もちろん、これらの要素を全部兼ね備えている人物がいたら、それに越したことはありません。
一行物語 〜 主人公の3ステップ 〜
主人公を決めたら、その「初めと真ん中と終わり」を決めましょう。(この「初めと真ん中と終わり」という言葉については、 プロットの項で詳しく書きます)主人公の初めの状態はどうであったのか、途中でどう変化したのか、最終的にどうなったのか。たとえば…
- 初め「自分がどうしようもなく醜く、愛される資格がないと思い込んでいた男」が、
- 真ん中「盲目の人との交流の中で人と触れ合う喜びを知り」
- 終わり「心から人を愛せるように」なる
といったことです。これが、主人公の3ステップであり、一行物語です。これができたら、プロットに入れます。…というよりも、これが一番最初のプロットです。
なぜこんなことを最初に考えるのか、疑問ですか?
物語というものは出来事を描くのではありません。人間を描くものです。登場人物たちが互いに関係し合う中で、選択し、変化し、成長していくこと、これがドラマであり、決して単なる出来事の積み重ねではありません。ですから、一番最初に主人公の変化を考えておくことは重要なのです。
もちろん、これから考えを深めていく中で、この一行物語もどんどん変わってくるでしょう。ですがまず、自分が書きたいもの、書くべき物語を定めるために、この一行物語を一度考えてみてください。必ず、役に立ちます。
ここでも、 以前の「脚本の書き方」から一部を引用しておきましょう。一行物語の作り方について、別のアプローチをしています。