プロットの章で、全体の構成の中で真ん中が一番難しい、ということを話しました。実際、観客を期待させ続けるというのは、本当に難しいことです。僕自身、一番筆が止まるところ、といっていいでしょう。
基本の流れとして、葛藤→選択→行動→変化の連鎖というのは変わらないのですが、単純に目の前の課題にだけ対峙させていては、物語が単調になります。予想もしなかったものが飛んできたり、観客の想定以上のスピードで物事が起こったりして、リズムを変えていくことが必要です。
観客のスピード感を理解する
観客には、物語を見るスピードというものがあります。ゆったりと見ているときもあれば、気持ちが急いでいて次々見たいと思っているときもあります。このスピード感をコントロールすることは大事です。
例えば、何かをきちんと説明したいときは、ゆっくりじっくりと見てもらうべきです。急いている時に、説明など聞いていられるものではありません。
逆にゆったり見ている観客に、次々といろんなことを起こして見せても「慌ただしくてよくわからなかった」と言われるでしょう。ですから、きちんと観客のスピード感を理解した上で書いていくことが大事なのです。例えば、こんな流れです。
- まずは状況をじっくりと説明する
- 大きな事件が起こって、観客の気持ちが急いたところで次々と事件を起こす
- ドンッと大きな衝撃を与えて、観客の心情をストップさせる
- そこでまたゆっくりと種明かしを見せる
- まだゆっくりして見たがっている観客をちょっとおいて行くぐらいのスピードで行動を起こし、観客をハラハラさせる
実際に何が起こっているかは書いていませんが、だいたいどんなことを観客が感じているかは分かるのではないでしょうか。この観客の印象を十分に計算した上でシーンを書いていくと、飽きにくい物語が作りやすくなります。( もちろんこれは、プロットの段階でも考えておくべきことです)
観客の予想のちょっと先を行く
観客というのは、必ず先の展開を予想しながら見ています。予想通りに展開すれば、ふむふむと納得しながら見て行くでしょうし、予想から外れれば「どういうことだ?」と疑問を持つでしょう。ですが予想通りすぎると飽きてきますし、疑問だらけでは「訳がわからない」と投げ出してしまいます。
うまく予想のちょっと先を行き、疑問と納得をバランスよく与えられれば、期待を持たせることができます。予想通りに展開するところ、完全に予想外のものを持ち込むところ、予想のちょっと先を行くところなど、観客の予想をコントロールしながら、バランスよく配置していくべきです。
とことん、観客をコントロールする
つまり「今、観客がどんな状態で見ているのか」をきちんと理解し、意識しなければいけないということです。そしてそれは想像するだけでなく、書き手がコントロールするのだ、という意識が重要です。
もちろん、全ての人が同じように見ることはあり得ません。ですが、ある程度の印象を揃えることは可能です。観客をどういう状態に導いて行くのか。真ん中を書く際には、必ずこの点を意識してください。
最後に、以前に書いた「脚本の書き方講座」から、「客の印象をコントロールする」の項を置いておきます。